アーティスト Daniel Ray

バイオグラフィー

人生を変えた彫師との出会い

1988年、アメリカはサウスカロライナ州にて、アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれました。そして2歳のときに、母の故郷である沖縄に移住し、日本人としての生活が始まりました変わり者で、常に周りと違う環境に身をおきたがる、協調性のないタイプだったと思います

一人遊びが得意で、3歳の頃に14〜16歳対象のLEGOブロックを説明書の絵だけを見て、丸一日集中して完成させたりしていました。また何よりも絵を描くことが
好きで、4歳の頃母の車を描くことから始まったのですが、今見ても4歳にしては
そこそこ描けているのではと思える出来栄えでした。

私が生まれ育った、嘉手納基地のある沖縄の嘉手納町では、友達を作りやすい性格も功を奏し、誰とでも馴染め、どこに行ってもそれなりに友達を作れる環境で中学校卒業まで過ごしました。

卒業後は沖縄県の東部にある、「開発隊」という自衛隊訓練式の職業訓練校に入隊し、半年間で建築関係を中心とした多くの資格を取得することができましたその、自衛隊志望か一般職志望の選択肢の中、一般職の方へ進み、現場での経験を積むために単身上京し、15歳で鉄筋工に従事しました。

そんな生活の中で、私の人生を変えた彫師との出会いがあったのです。

その彫師に、「100均に売ってる電動歯ブラシを改造して、タトゥーを彫ることができたら、教えてやる。」 と言われたのです当時若かった私は、彫師の冗談だと気付かず、出来ないことがあるのは自分のプライドが許さなかったので、自分なりに工夫してタトゥーマシンを作り出しました。

ピストン運動するそのマシンで、墨汁を使い足に龍の顔を彫ってみることにしたのですが龍の顔をひと通り描き切ったところで、プラスチックでできたそのマシンはバラバラに壊れてしまいました修復が不可能だったので諦めていたのですが、ある日偶然に、冗談を言った彫師の目に止まったのですスタジオに呼ばれ、私のタトゥーアーティストとしての人生が始まったのです。16歳のときでした。

激流に逆らうような日々

彫師の元で修行を積んだ私は、20歳のとき、現在のスタジオがある京都に来ました。

すぐにでも自分のスタジオを構えたかったのですが、その前に絶対に経験しておきたいことがありました。それは1300年以上の間、脈々と受け継がれてきた職人技術、仏像彫刻師としての業の習得でした。

約4年と半年の間、日本最大級の仏像彫刻工房にて、ほぼ山籠りの状態で数メートル級の大仏から3cmほどの仏像までひたすら制作し続けました。仏像彫刻の世界で、タトゥーや刺青の世界にいるだけでは学びきれなかったであろう、本物の’和’の芸術性とデザイン力、3D(三次元)で仏像を捉える能力、仏像の歴史、梵字についてなど、仏教についてのありとあらゆる知識を習得し、経験を積むことができたのは今でも大きな財産です。

また、タトゥーアーティストとして自らのスタジオを構えるという夢を実現させるため、仏像彫刻の仕事を続けながら、出張タトゥーアーティストとしての生活を始めました。毎日、仏像彫刻の仕事が終わると、タトゥーアーティストとしての仕事をする。睡眠時間は2時間ないしはそれ以下でした。体は悲鳴をあげていましたが、頭の中には子供の頃によくやった、「下りのエスカレーターを走って上がる遊び」のイメージが思い浮かび、走り続けないと現状維持、もしくは落ちるだけだと自分を奮い立たせていました。

2012年12月、多くの方々の協力を得て、京都の桂に、現在のスタジオの前身であるスタジオをOPENしました。

友人・知人の全くいない京都に1人でやってきて、商売を始めるまで、並大抵の事ではありませんでした。睡眠時間を削り、出張タトゥーアーティストをしていた中で、アーティストとしての基盤を作り上げていたことに助けられたのだと思います。

桂で立ち上げたスタジオは、風情のある良い環境でしたが、駅から遠くアクセスしづらいというデメリットがあったので、2年後の2014年に堀川五条に移転したところ、お客様も足を運びやすく、より多くの方々にTATTOO STUDIO Ray’sを知っていただくことができ、仕事が急に充実するようになりました。

ホワイトタトゥーの研究

桂での第一スタジオのOPEN以来、初めての方やご紹介で来られる方、そして観光で来られる方と様々なお客様が増える中、どうやったら京都で生き残っていけるかを常に考え、頭を悩ます日々が続きました。最終的に私が至った結論は、・他のアーティストが‘やっていないこと・この業界で’初’のこと・誰にも‘真似出来ないことの3点を身につける必要があると感じました。

これらを熟考し自問自答した結果、ホワイトインクだけで彫るホワイトタトゥーを研究する道を見出したのです。

ホワイトタトゥーは、他の多くのタトゥースタジオではたいてい敬遠されます。なぜホワイトタトゥーが毛嫌いされるのかというと、ホワイトインクの色のトーンを均一に肌に入れることが難しく、転写剤の色が交じり、キレイに仕上がらない事が挙げられます。

また、ホワイトタトゥーは施術する際に出る、「血」が交じることで変色します。さらに、ホワイトはチタン成分を含み、金属アレルギーを持っている人は色が乗りにくいという特性もあります。そのため、より深く刺すことで、皮膚組織の許容量を超え、傷になり、ケロイド状態になることもあります。

それらの事象を鑑み、どうやったら「ホワイトインクが発色良く綺麗に、かつ安全に肌に乗るのか」という研究を日々重ねました。

要因を一つ一つ解決し、調査・研究を繰り返すことで、ついにホワイトタトゥーを安全かつ綺麗に施術することができるようになりました。

いくつかある秘訣の内、第一に当スタジオに来られるお客様が安心・安全に施術に臨むことができるよう、施術の際の出血を抑えること、つまりいかに‘速く、丁寧に、そして安全に’施術するか。
これは私のタトゥーアーティストとしての根幹部分であり、そして今でも更に習熟させ続けなければいけない課題でもあります。常に向上心を持ち、苦学力行することで、出血が少なく治りが早い施術、極力痛みの少ない施術というものが可能になりました。

現在日本においてタトゥーは、少し悪びれた雰囲気があり、昔のヤクザの刺青文化と相まって、あまり好ましい印象は持たれていないのが現状です。一方海外において、特にアメリカやヨーロッパ諸国、オーストラリアでは、タトゥーはピアスの穴を開けるような感覚、もしくは服を着るかのような感覚で、ファッションの一部として捉えられていて、何の問題もなく社会に適応している一つの文化です。

現在はドイツやロンドン、アメリカなどの世界各国で、定期的にタトゥーの国際大会が行われており、優勝者には1千万円の賞金が出ることもしばしばです。2015年には日本の隣国である台湾でも、タトゥーの国際大会が開催されました。

日本独自の文化的背景や潜在意識に、「タトゥー=刺青=特殊・悪い」というイメージがある中、より多くの方にタトゥーをファッションとして楽しんでいただくための手段として、ホワイトタトゥーは受け入れてもらいやすいのではないかと感じました。

ここに来て良かった!と言われることの喜び

京都以外の他府県から、遠方遥々TATTOO STUDIO Ray’sに通ってくださることはとても嬉しく、本当にありがたいことです。

ファーストタトゥーの方もいらっしゃいますし、いろいろなお店を回って当店に来てくださる方もいらっしゃいます。私自身で言うのも気恥ずかしいですが、皆様がおっしゃってくださいますのは、
「接しやすい「最初のカウンセリングから最後のアウターケアまでの対応が行き届いている」「言葉づかいが丁寧(恥ずかしながら決して礼儀正しい言葉遣いではありませんが、おもてなしの心を持ってお話させて頂いています)」「痛くない・血が出ない・発色がキレイ・施術が速い・施術技術が高い」とのことです。

はるばる遠方から来て、良かった!とおっしゃって下さるのはとても嬉しいですし、何よりも励みになります。

遠方から来られる方が増えたきっかけになったのは、ホームページとFacebook等のSNSです。どうしたらたくさんに人にホームページを見ていただけるか、そして見た人がタトゥーについて安心してもらえるように作りました。また、施術と施術の合間などの隙間時間を利用して、FacebookやInstagramのSNSにて最近のスタジオの様子や、タトゥーの作品の紹介記事を投稿しています。

ホームページをご覧になったお客様から、「初めてのタトゥーで不安でいっぱいだったけど、ホームページを見て安心できた。」「ホームページのギャラリーや、Instagramの投稿画像が豊富で、作風が気に入ったので挑戦出来た。」とのお声をたくさん頂いております。

さらにここ最近では、日本全国からのご来客に留まらず、おとなりの中国や台湾、太平洋を渡ってアメリカやカナダ、ブラジル、ニュージーランドやオーストラリア、さらにはヨーロッパ諸国のイギリス、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、スイスなど文字通り世界中からお越しいただいております!

2015年、2016年と、現在京都が世界の観光都市ランキングで1位を獲得しているという理由も挙げられますが、EメールやFacebook、Instagramのメッセージを通じて予約してくださる方や、既に当店のリピーターとして複数回ご来店くださっている方もいらっしゃいます。

こうした海外からのお客様にも、日本国内から来られるお客様と同様に満足していただきたいと考えているので、デザインの打ち合わせや施術の注意事項等の説明は全て英語で対応しています。また、タトゥーの施術の同意書や、タトゥーを入れた後のアフターケアの説明書等も全て英語版を作製し、細かな事柄も確実に伝えられるよう心掛けています。

日本の京都にスタジオを構える以上、「おもてなし」の心で、日本のタトゥースタジオのイメージをより良いものにするという心構えを持って施術を行っています。

決して安くはない交通費をかけて、時には宿泊費もかけて、京都観光のついで、ではなく当スタジオに足を運んでくださったと聞くと、私のやっていることに意義を感じます。私の知らないところで、当スタジオの存在や、技術が広まっていて、それを求めてはるばる来てくださるのは本当に有難いことです。

安全面・衛生面の徹底は、タトゥーアーティストの必須条件

衛生面・安全面でこだわっていることは、人が見ている、見ていないにかかわらず、施術終了後に施術室の消耗品(シーツ・枕カバー・その他施術に使う消耗品など)や、洗浄にかける金属素材をいち早く施術室から撤去して、消毒液でまんべんなく(台、椅子、それらの裏、ライトの裏、自分が触ったであろう箇所、触る可能性のある箇所全て)に滅菌作業をします。

実際に使ったシーツ関係、インクキャップ、マシンの先のチップなど使い捨てに出来る部分は全て使い捨てにしています。

まずこれらの使い捨ての備品は速やかに部屋から除去・廃棄し、触れた場所、そして触れる可能性のある場所全てを落ち度無く滅菌作業をします。更に捨てられない器具は使用後に薬品でブラッシングし、超音波洗浄器にかけ、目視で汚れが残っていないかチェックしながら水で洗浄することを2回繰り返した後、高圧高熱洗浄機でさらに滅菌します。

この高圧高熱洗浄機で感染症原因となるほとんどの菌を消滅することができるのですが、より徹底的な安全性を求め、100%を150%に引き上げるためにステアライザーという機械に入れます。
ここでは機材を一つ一つ滅菌パックに入れ、密封した状態にしてステアライザーの紫外線を当て、殺菌保管できる状態にしています。

ブラッシングから高圧高熱洗浄機・ステアライザーという感染症対策を充分に行うことで、お客様も自分も安心してこのスタジオを利用していただけると思いますので、ここだけは手が抜けないポイントだと思っています。

これら衛生面・安全面の対策がきちんとできていないスタジオで施術する上で怖いのは、HIV・C型肝炎などの感染症です。それらの必要性と対策を把握できていない例としては、例えば高価なインクを節約のために使い回している事例や、針の使い回しの事例を耳にしたことがあります。針も高価なので小さなワンポイントしか使っていない場合、もったいない気がするのもわかりますが、そのことによって後に起こることを考えると使い回しは絶対にありえません。

安全面・衛生面を徹底することは、タトゥーアーティストとして存在していくための必須条件だと考えています。安全面・衛生面を疎かにし、知識と経験、責任感と対応が欠如しているのに、技術だけが優れている、ということはありえないと思います。衛生管理がきちんとしているスタジオは、デザインから施術までの質の高さもうかがえますし、尊敬する部分も沢山あります。逆に言うと、その技術を見れば、どのように安全管理対策がなされているかは一目瞭然です。

「失敗」はそもそも在り得ない

お客様にタトゥーを施術するにあたっての信念、ポリシーは、絶対に手を抜かないことです。長所でも短所でもあるのですが、手が抜けません。カウンセリング・施術・アフターケアの一連の流れの中で、いい意味でも悪い意味でも手が抜けません。

お客様の多くはご希望やご要望があってカウンセリングに来られます。「この柄を入れて下さい。」というお客様もいらっしゃれば、「タトゥーを入れたい!」と来られる方もいらっしゃいます。

お客様の求ている内容・要素・施術の場所・デザインの概念というものと、当スタジオのデザインを融合させないとベストなものができません。私の想いばかりを乗せてしまってもいけないし、今だけ良いという刹那的な考えではなく、将来のことも考えた上で、「タトゥーをしなければよかった・・・」とか、「タトゥーを消したい・・・」と思うタトゥーの‘条件’から外れてもらいたい。

実際に入れたタトゥーを、一生物の作品と思って頂けるものに仕上げるのがモチベーションにもなるので、カウンセリングはとても重要だと考えます。

カウンセリングの時間は一概には言えず、10分でデザインが決まることもあれば、3時間を過ぎて決まる場合や、時には日をまたいでじっくり考える時間を持ち、再度お越しくださるお客様もいらっしゃいます。

タトゥーのデザインは、本当に入れたかったものである事が大切ですので、カウンセリングの手間や時間は惜しみませんカウンセリングは、施術にも関わりますし、その後のお客様の将来にも関わってきます。

カウンセリングに手を抜いたり、私の意見やアドバイスだけで完結したデザインで作品を仕上げてしまうと、その先に待っているのは、「あ、タトゥースタジオレイズのダニエルさんのタトゥーってこんなもんなんや・・・」「ここ、雑だね・・・」、「なんか普通やね・・・」という評価になってしまい、私のモチベーションにも関わりますしプライドにも傷がつきます。

そう言われないためにも、一番大切なのは入り口であるカウンセリングですし、いくら時間がかかっても、どんな内容でも100%、120%それ以上の力を出して、とことんカウンセリングをいたします。一度決まったデザインを白紙に戻したり、デザインが決まらず時間がかかってしまうとお客様が気不味く感じてしまうことがあるかもしれませんが、私は全く嫌な気持ちにはなりません。

たくさんタトゥーを入れたくても、まずは一箇所から始まりますし、既にたくさんタトゥーが入っている中でデザインを追加する場合、お客様の思いをそのまま彫るのではなく、全体のバランスを見て助言することが、タトゥーアーティストの仕事だと思います。

電話やメールでお問い合わせを頂くこともありますが、お客様が見えないので、二つ返事で「それいいですね。」とは言えません。実際にお会いして、私が様々な提案をさせていただく中で、お客様の一瞬喜ぶ表情、求めていらっしゃるものと合致した雰囲気を掴みながら、また過去のタトゥーの良い事例・悪い事例を参考にしつつ、ファッション性とタトゥー本来の意味合いがマッチしたもの、バランスの良いものを施術していくのが最低条件です。

カウンセリングは無料ですが、衛生管理を徹底することと等しく、カウンセリングはとても重要です。

一生残るタトゥーを施術するということで、ワンポイントの小さいものから大きいものまで常にプレッシャーと責任感を感じています。

失敗はありません。失敗するようならやりません。

挑戦心と向上心が進化をもたらす

カウンセリングを通じて完成した、タトゥーアーティストとお客様の双方が完全に納得したデザイン。お客様は、いよいよ実際に施術に進めるという安堵感、またはその作品を一生背負っていくという責任感、今後様々な人が目にするかもしれない緊張感など、様々な思いが
入り混じった状態だと思います。一方私の場合、作品に対する期待感が遥かに大きいです。

今までの経験や知識を含め、常に全力で取り組んでいるので、たとえ1cm四方のワンポイントタトゥーであったとしても、絶対に手は抜きません。私自身の中に後ろめたい状況を作らない、ということを徹底する性分で、どんな小さな作品でも気は抜かないので、達成感があり、恥じることはないかと思います。

この先1年2年、そして10年と経っていく中で恐らく、今よりも技術が向上して、探求心を止めない限り上達していくと自負しておりますが、今の基準を常に昨日より高く設定し、万が一昨日の自分以下になるようなら、まだまだ真のプロとは言えないと考えています。

昨日の自分を凌駕する意識さえあれば、責任とプレッシャーから押し潰されることなく、むしろ楽しむことができます。そしてそれは私が施術していく中でのやりがいで、また同様に挑戦心や向上心でもあり、それら全てが調和しているからこそ、‘今’、毎日楽しく施術することができています。

世間のタトゥーのイメージをクリアにしたい

タトゥーアーティストの世界は、それぞれのアーティストや彫師に個性があり、考え方も様々です。私の考えが皆様に共感いただけるか、まして正しい考えであるかは、私自身が推し量れるところにありません。共感出来ないこともあるかと思いますが、この世界で様々な考え方を聞く中で、「タトゥーを入れてはいけない環境だからこそ、価値がある。」という考え方があります。

私はある意味で、この考えは的を射ていると思います。タトゥーを入れることが認められない状況で入れることの良さや、ある種の価値観というものは確かに存在すると思います。これに対して私は肯定も否定もいたしません。一概に言えることではありませんが、私自身としては、タトゥーが一般に認められる環境をタトゥーアーティスト自身で構築し、日本でタトゥーを肯定できる、タトゥーを入れていることに罪悪感や恥じらいを感じること無くファッションや芸術として楽しめる時代がくるようにタトゥー業界全体で協力し、高みを目指していきたいという気持ちがあります。

そのためにはカウンセリングから施術、衛生管理、そしてお客様に対してのご対応が従来の路線とは違うところにあってもよいのではないかと思います。全体に問いかけるのは難しいですが、グレーでダークなイメージのあるタトゥーだからこそクリアに変えていかないと、日本で認められるのはまず難しいと考えています。

タトゥーの技術を研鑽しているアーティストが、この気持ちを共有して全体をクリアにし、お客様の意見を取り入れながら技術を競い合っていける環境を作り出す。

アーティストの意見だけで完結するのではなく、また型にはめるのではなく、お客様がいらっしゃり、お客様の意見や要望を形にして初めて「タトゥー」という作品は完成します。タトゥーの生きやすい環境、バランスを求めたデザイン、お客様へのご対応、衛生面、それら全てが整ったタトゥーイングシステムを新たに作りたいと思っています。?

全体のシステムが整い、一つ一つに安心感のある環境であれば、タトゥー業界は日本でもまだ批判・批評は避けられるのではないかという期待はあります。

行動に起こす前から無理だと結論づけてしまうより、できる限りのことを考え行動し、その結果に準じてさらに行動に移す。 ─ 人事を尽くして天命を待つ ─ 私の目指すところ、心の内で多くの方々に伝えたいところは其処にあります。

お客様が希望するデザインを創造する

タトゥーの下絵デザインは、一度作成してお客様に確認のため提出しますが、提出したデザインと実際に施術するときに必要なデザインは違います。

施術するときに必要なデザインは、あくまで輪郭線であり、どこに何があるのかがわかるタトゥーの施術を前提にした基準の線だけです。肌に貼るという転写シートの構造上、仕上がった完成デザインを転写することは出来ません。アーティストが完成図を把握した線だけのデザインが実際には必要です。しかしながら、これではお客様から見ると仕上がりがわからず、不安が伴うものになります。でも、ひとつの絵を完全に仕上げるのは時間がかかり、そのお客様を待たせる事にもなりますし、ほかに沢山お待ちいただいているご依頼者のためにもスピーディに簡潔にしていかなければなりません。

イメージできるように説明して、仕事もスムーズに流れるようにするために、仕上がりを断片的に書いたり、アウトラインで全体の構造とバランスを提出して作品に取り掛かります。

デザインにとりかかる際に、カウンセリングの時の記憶とカウンセリングシートに書かれた事細かな情報を元に、お客様一人一人のデザインを作成していくのですが、記入されたすべての項目は外せないという制約の中で、自分のデザイン力が試されるという局面に立たされます。

タトゥーは“絵”ではありません。タトゥーアーティストは画家ではありません。タトゥーの施術が全ての基準です。タトゥーになった時が作品の完成です。絵がどれだけ上手に描けても、肌の湾曲面に対してのタトゥーの見栄えのバランスを考えた時、歪んで見栄えが悪くなることはあってはなりません。体の寸法と施術部位、そして関節の可動域等を全て把握した上でのデザイン力が必要です。

そしてなにより、1発でお客様に気に入ってもらえる事を基準に考えます。書き直しのないよう全力で描き、1発でOKを頂くこともあれば、もう少しこうしたいというご意見を頂戴することも勿論あります。デザインを具現化することで、お客様も実際のイメージとしてどういう作りになるのかということがわかり、変更が出ることも有ります。変更が出るということは、作品がより良くなるということに繋がるので、お客様の考えるより良い作品を目指しての修正は、僕にとって大きな財産となる作業です。

1回の打ち合わせでより明確に把握して、より良いイメージを掴めてもらえる場合もあれば、修正が入ることで、自分が把握し切れていなかったより良いデザインが仕上がるという場合もあります。どちらに転んでも傑作が生まれますので、デザインの基準はお客様の希望を絶対に崩さないことです。

スタッフは無くてはならない存在

スタッフは皆、それぞれの持ち味があります。持っているスキルや能力が違うので、得意なこと、不得意なことがあり、いかに適材適所に当てはめていくのかが鍵です。

事務が向いている子もいれば、技術的な作業が適している子、営業広告が得意な子、各々がそれぞれの役割の中で遣りがいを持ち、細々とした雑用を含めた苦労と向き合いながら、頑張りたいと思える場所づくりを心掛けています。

事務・アシスタント全般を任せられる男性スタッフ、それぞれが向上心を持って励んでくれています。時には厳しいことを言ってしまいますが、そこに愛や誠意を感じてくれているようで、遣りがいをもってくれています。スタッフは無くてはならない存在です。

24時間体制の中、私は約21時間稼働しています。お客様のご予約が増えると、その分の雑用の負担も増えていくので、常に満身創痍です。そこに様々な形でバックアップしてくれるスタッフたちがいることで、本当に助けられています。

スタッフがいるということは、その分頭脳が増えるということで、それだけ新しい発想が生まれます。

私のほうが享受する部分が多いと、日々感じています。指導することで、自分が成長していくことを実感しています。

教えてあげるというよりはむしろ、教えさせて頂いているという立場だと思います。相手に達成を求めるからには、私も模範となる達成を常に求めなければいけないという責任があります。

タトゥーとは、‘心の形’の表現

初めてタトゥーを入れる人にとって、病院でレントゲン検査やCTスキャンができなくなってしまう、痒くなる、痛くなるといった噂、そして社会的にどう見られるかわからないという不安など、多くの心配があると思います。

それでも、どうしてもタトゥーを入れたいという強い気持ちがある方は、ご自身の置かれている状況を十分に顧みて、タトゥーアーティストとしっかりカウンセリングすることをオススメします。

それは入れるべきものなのか。今入れるのは早いのか、或いは内容として入れない方がいいものなのか。見えるところに入れるのか、見えないところに入れるべきなのか。それらを熟考した上で、自己責任の範疇でタトゥーに挑んでいただきたいと思います。

また、自分の気持ちに嘘をつかずに忠実であることも大切です。若いころにタトゥーを入れたくて、でも我慢して、結婚して出産して、子育てが終わってもやっぱり入れたかったと、当店に来られる方は少なくありません。

タトゥーとは、心のかたちの表現です。1人の人間と1人の人間の間に作り出される新しい芸術です。お互いの思考と気持ちと経験が融合して具現化される芸術というものに、私は大きな価値を感じています。

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